前回、合格を知るまでの話をお伝えしました。
今回は、合格後の話です。7年間受け続けて合格した後、何が変わったのか。正直にお伝えします。
■合格後すぐにやること:事務指定講習
社労士に合格しても、すぐに社労士として働けるわけではありません。
社労士登録をするには、2年以上の実務経験が必要です。私にはその経験がなかったため、事務指定講習を受ける必要がありました。実務経験の代わりに受講できる講習で、合格者のうち実務経験が足りない人が対象です。
講習は通信指導が中心で、社労士業務で実際に使う書類を事例に沿って作成し提出する形式でした。提出すると添削されて返ってくる、いわば「赤ペン先生」のようなものです。難しい内容ではありませんでしたが、まとまった量の課題をこなす必要がありました。なお、現在は通信指導に加えてeラーニングも組み合わさった形式になっているようです。
合格したからといって「はい、明日から社労士です」とはならない。そこだけは、これから受験される方にあらかじめ知っておいてほしいことです。
■合格後に参加した、社労士の勉強会
事務指定講習を終えた後、ユーキャンの合格者向けコミュニティに参加する機会がありました。使っていた参考書がユーキャンだったことが縁だったかもしれません。詳しい経緯はあまり覚えていませんが。
そのコミュニティは、本業は別に持ちながら社労士資格を取得した方が主導している勉強会でした。テーマは障害年金や障害一時金の受給申請の代理業務。障害を抱えた方が給付を受けるための手続きを支援するという、専門性の高い分野です。
勉強会では、初診日の記録を取るために医療機関へ同行するといった、実務ならではの話を聞くことができました。テキストだけでは知ることのできない現場のリアルで、とても勉強になりました。
参加したばかりのころ、自分の受験体験を講師として話す機会をもらいました。今思い返すと、つたない話をしたなと恥ずかしい気持ちになります。それでも、7年間の体験を人に伝えるという経験は、合格後の自分にとって一つの区切りになった気がします。
■「勉強しない日々」は、意外と長く続かなかった
合格直後は、しばらく勉強から離れていました。
仕事終わりは食堂で勉強する。休日の午前は図書館に行く。7年間続けてきたそのルーティンが、ぽっかりなくなった状態です。最初は解放感がありました。でも少し経つと、なんとなく落ち着かない気持ちになってきました。
せっかく身についた習慣を手放してしまうのが、もったいない。そう感じたのです。それで、また別の資格の勉強を始めました。社労士合格後も、勉強を続けることになります。
長い時間をかけて作り上げたルーティンには、それ自体に価値があると感じていました。やめてしまえば、また一から作り直さなければならない。それが面倒だったし、惜しかったのだと思います。
■転職できたのは、資格があったからだった
転職したのは、合格から2年ほど経ってからでした。
最初の転職先は社労士事務所でした。プロフィールには書いていませんが、ここに書いておきます。在籍期間が短かったこともあり、詳しく語れることは多くありません。ただ、その転職が実現したのは間違いなく社労士の資格を持っていたからでした。
社労士は難易度の高い国家資格で、労働・社会保険に関する書類作成や手続き代理といった独占業務があります。その資格を持っているということが、採用の決め手になったのだと思っています。
ただ、正直なところ不安の方が大きかったです。実務経験はほぼゼロ。営業なんて一度もしたことがない。受験勉強で積み上げた知識が、実際の仕事でどれだけ通用するのか、まったく見当がつかなかったのです。
それでも、環境を変えたいと思うなら動き出すしかない、ということははっきりわかっていました。先のことは動いてみないとわからない。でも自分は自信がなくて、資格を取るまでその一歩が踏み出せなかった。
就職氷河期の世代だということも、関係していると思っています。就職のタイミングで苦労した経験は、その後の働き方や転職への向き合い方にも影響します。「動けばなんとかなる」と簡単に思えない空気が、あの世代にはどこかにある気がするのです。
資格を取ったことで、ようやく動き出せた。そういう転職でした。
■7回受けた人間が言う。できれば3回以内で受かってほしい。
こんなことを言うのも何ですが、資格試験はできるだけ早く受かった方がいいと思っています。社労士試験に限らず、これはどの資格にも言えることです。できれば3回以内で。
毎年、膨大な知識を頭に詰め込む作業は本当につらい。そして合格した後、勉強してきた科目を見るのも嫌になる瞬間があります。7年間受け続けた自分が言うのだから、間違いありません。
受験勉強中に、短期集中・一発合格を勧めるブログを読んだことがあります。当時はそういうものかと思って読んでいましたが、今になってその意味がわかる気がします。
受験勉強はお金を生まないし、実務の経験にもなりません。合格してからが本当のスタートです。試験の知識と現場の仕事の間には大きな隔たりがあって、一人前になるには実務の中で失敗を重ねていくしかない。であれば、受験期間はできるだけ短く切り上げて、早く現場に出た方がいい。あのブログが言いたかったのは、そういうことだったのかもしれません。
7年間勉強し続けた自分には、7年分の知識の詰め込みと、7年分の実務の空白があります。早く合格していれば、その時間を実際の仕事の経験に充てられていた。これは社労士に限らず、資格を目指すすべての方に伝えたいことです。
■「諦めたらそこで終わり」は、呪いにもなる
7回も受験していた当時、スラムダンクの安西先生の言葉が頭にありました。
「諦めたら、そこで試合終了ですよ。」
その言葉に何度も背中を押してもらいました。手応えがある限り続ける。やめたら終わり。そう思って7年間走り続けました。
ただ今になって思うのは、この言葉は人によっては呪いにもなりえる、ということです。
手応えのない努力を、「諦めてはいけない」という言葉だけで続けてしまうことがあります。本当は早めに方向を変えた方がいいのに、その言葉が足を止める。そういうケースも確かにある。
どちらが正解かは、誰にもわかりません。続けることが正解の人もいれば、早く見切りをつけることが正解の人もいる。人生に決まった答えはないし、その決断をするのは自分自身です。うまくいかなかったとしても、他人のせいにはできません。自分が選んだことだからです。
■社会は変わる。それでも、自分の頭で考える
AIの発展と普及によって、士業の仕事は変わっていくと言われています。書類作成や手続き代理といった業務の一部は、すでに自動化が進んでいます。社労士も例外ではないでしょう。
それが資格の価値を下げるのか、あるいは別の形で価値が生まれるのか、今の時点では誰にも断言できません。社会はこれからも変わり続けます。
だからこそ、どんな決断をするにも、自分の頭で考えることが大事だと思っています。誰かの言葉や流行りの意見に流されるだけでなく、自分はどうしたいのか、自分には何が向いているのかを、自分で考える。
迷ったときは、先人に教えを乞うことも大切です。経験者の言葉には、情報では手に入らないリアルがあります。この連載もそのひとつになれれば、と思って書いてきました。
■まとめ
7回落ちて、合格して、転職して。その後の話を正直にお伝えしました。
資格があったから扉が開いた。でも実務への不安は大きかった。できるなら早く受かってほしい。「諦めるな」は力にもなるが、呪いにもなりうる。どんな決断も、最後は自分がするものです。
社会は変わっていきます。それでも、自分の頭で考え、迷ったら経験者に聞く。その姿勢だけは、どんな時代でも変わらないと思っています。
今、社労士試験に向けて勉強している方へ。できるだけ早く合格して、早く現場に出てください。この連載が、そのための一助になれば嬉しいです。



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