2026年、あなたの医療費はどう変わるのか

【全3回・第2回】変化編

前回は、診療報酬と薬価の基本的な仕組みを解説しました。医療費がどのように計算され、誰が決めているのかを押さえておくと、今回の話がぐっとわかりやすくなります。

2026年は診療報酬と薬価がともに改定される節目の年です。今回は「自分の医療費が具体的にどう変わるのか」という生活者の視点で解説します。

1.2026年改定の全体像

まず今回の改定の数字を整理します。

項目改定率施行日
診療報酬本体+3.09%(2年平均)2026年6月1日
薬価-0.87%2026年4月1日
ネット改定率+2.22%

診療報酬本体のプラス3.09%は、1996年度以来30年ぶりの3%台です。背景にあるのは物価高騰と医療従事者の賃上げへの対応です。

一方、薬価はマイナス0.87%の引き下げです。薬価は定期的に市場の実勢価格に近づける形で引き下げが続いており、今回も同じ流れです。

診療報酬がプラスになれば、医療機関の収益が増え、医療の質向上につながる可能性があります。ただし患者の窓口負担も変化します。次章から具体的に見ていきます。

2.OTC類似薬への追加負担

OTC類似薬とは何か

OTC薬とは、処方箋なしにドラッグストアや薬局で買える市販薬のことです(Over The Counterの略)。

「OTC類似薬」とは、このOTC薬と同じ成分・同じ効果を持ちながら、保険診療で処方されている薬のことです。市販でも買えるものをわざわざ病院で処方してもらっているケースが該当します。

今回の改定で、こうしたOTC類似薬を処方してもらう場合に患者の追加負担が導入されます。

具体的にどんな薬が対象になるのか

対象となる薬の例としては以下のようなものが挙げられています。

  • 花粉症の飲み薬・点鼻薬・目薬(セチリジン、フェキソフェナジンなど)
  • 湿布薬(ロキソプロフェン、インドメタシンなど)
  • 胃腸薬・整腸薬(ファモチジン、酸化マグネシウムなど)
  • ビタミン剤
  • 保湿クリーム・軟膏

「いつも病院でもらっている薬」がドラッグストアでも手軽に買えるものであれば、追加負担の対象になる可能性があります。

免除される人もいる

すべての患者が対象になるわけではありません。以下の方は追加負担が免除される方向で検討されています。

  • 小児(市販薬の用法・用量が設定されていない場合など)
  • 難病患者
  • 低所得者(住民税非課税世帯など)

自分が対象かどうかはかかりつけの医師や薬剤師に確認するのが確実です。

「薬は病院でもらうもの」という習慣がある方は、一度見直しのタイミングかもしれません。ドラッグストアで同じ成分の薬が手軽に買える場合、そちらを選ぶことで負担を減らせるケースがあります。

3.先発品を希望する場合の負担増

先発品とジェネリックの違い

医薬品には「先発品(ブランド薬)」と「後発医薬品(ジェネリック)」があります。

先発品とは、製薬会社が長年の研究開発を経て最初に製造・販売した薬です。ジェネリックは、先発品の特許が切れた後に他のメーカーが同じ有効成分で製造した薬で、先発品より価格が低く設定されています。

有効成分・効き目・安全性は同等とされていますが、添加物や剤形が異なる場合があり、患者によっては使用感に差を感じることもあります。

選定療養という仕組み

ジェネリックがあるにもかかわらず、患者が希望して先発品を処方してもらう場合、その差額の一定割合を患者が自己負担する仕組みが「選定療養」です。

ジェネリックの薬価が100円、先発品が150円の場合、差額50円の4分の1にあたる12.5円が追加負担となります(通常の自己負担分に加えて)。

今回の改定でこの選定療養の対象品目がさらに拡大されています。「いつも飲んでいる薬と同じものがいい」という希望は自然なことですが、その場合は追加負担が発生することを念頭に置いておく必要があります。

ジェネリックへの切り替えが不安な場合は、医師や薬剤師に相談してみてください。薬によっては先発品を続ける医学的な理由がある場合もあります。

4.生活者として知っておくべきこと

自分の薬を一度確認してみる

今回の改定をきっかけに、普段処方されている薬を見直してみることをおすすめします。確認のポイントは2つです。

  • 処方されている薬がドラッグストアで購入できるOTC薬と同じ成分かどうか
  • 処方されている薬にジェネリックがあるかどうか

かかりつけの医師や薬剤師に「この薬はOTC類似薬の対象になりますか」「ジェネリックに変えることはできますか」と聞いてみるだけで、負担を減らせるケースがあります。

窓口負担が増える人・変わらない人

今回の改定で窓口負担が増えるのは、主に以下のケースです。

  • OTC類似薬に分類される薬を処方してもらっている方
  • ジェネリックがあるにもかかわらず先発品を希望している方

逆に、もともとジェネリックを使っている方や、OTC類似薬に該当しない薬を処方されている方は、今回の改定による直接的な窓口負担の変化は小さいと言えます。

ケース今回の影響
OTC類似薬を処方してもらっている追加負担が発生する可能性あり
先発品を希望している(ジェネリックあり)選定療養の対象拡大により負担増
ジェネリックを使っている直接的な影響は小さい
OTC類似薬に該当しない薬を処方されている直接的な影響は小さい
小児・難病・低所得者免除規定あり(要確認)

まとめ

2026年の診療報酬・薬価改定で患者・生活者に直接関係する変化は主に2つです。

  • OTC類似薬への追加負担:ドラッグストアで買える薬と同成分の薬を処方してもらう場合、追加負担が発生
  • 先発品選定療養の拡大:ジェネリックがあるのに先発品を希望する場合、差額の一定割合を自己負担

いずれも「知っているかどうか」で家計への影響が変わります。普段処方されている薬を一度確認し、疑問があればかかりつけの医師・薬剤師に相談してみてください。

次回は、今回の改定が医療機関の経営にどう影響し、地域の医療提供体制にどんなリスクをもたらすのかを解説します。


※本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。制度の詳細や個別の負担額については、厚生労働省の公式サイトまたはかかりつけの医師・薬剤師にご確認ください。

【参考資料】
・厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
・厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の在り方について」
・厚生労働省「長期収載品の選定療養について」

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