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社労士 雇用保険 不服申立てとは【審査請求と再審査請求、覚え方のコツ】 | SRライフLabo

社労士 雇用保険 不服申立てとは【審査請求と再審査請求、覚え方のコツ】

【雇用保険シリーズ 第7回】

雇用保険の窓口で出された決定に納得できないとき、どうすればいいのか。実はこの「納得できないときの対処法」は、雇用保険法にきちんと規定が置かれている。

社労士試験の勉強をしていると、「審査請求」「再審査請求」という言葉は出てくるが、正直なところ最初は「自分には関係のない手続き」だと思っていた。工場で働いていて、雇用保険の窓口対応をするのは総務の担当者で、自分が直接ハローワークとやり取りする機会はほとんどない。だが、基本手当の受給資格や離職理由の判定は、誰にとっても「自分の生活に直結する処分」になりうる。判定に納得できないときにどうすればいいのか、という制度を知っているかどうかは、知識として持っておいて損はない。

この記事では、雇用保険の処分に不服がある場合の「審査請求」「再審査請求」の仕組みを、試験対策の視点を中心に整理する。

第1章:不服申立て制度とは何か

雇用保険の不服申立て制度は、行政不服審査法の特例として、雇用保険法に独自の規定が置かれている。対象となるのは、次の処分だ。

  • 被保険者資格の取得・喪失に関する確認
  • 失業等給付(基本手当・教育訓練給付など)に関する処分
  • 不正受給に係る返還命令・納付命令に関する処分

一方で、雇用保険二事業(雇用安定事業など)に関する給付金の処分は、この特別な審査制度の対象には含まれない。この場合は、一般法である行政不服審査法に基づいて不服申立てを行うことになる。「失業等給付に関する処分かどうか」で扱いが分かれる、という点はまず押さえておきたい。

不服申立ての流れは、次の2段階になっている。

  1. 審査請求:処分に不服がある場合、まず雇用保険審査官に審査請求を行う
  2. 再審査請求:審査官の決定にさらに不服がある場合、労働保険審査会に再審査請求を行う

審査請求・再審査請求はいずれも、文書または口頭で行うことができる。請求先は、処分を行ったハローワークを管轄する都道府県労働局の雇用保険審査官だが、処分を行ったハローワークの所長、または請求人の住所地を管轄するハローワークの所長を経由して提出することもできる。

第2章:審査請求の仕組み

審査請求には、押さえておきたい期間のルールがある。

審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月以内だ。ここでいう「知った日」は、抽象的に知ることができた日ではなく、実際に処分の通知を受けて知った日を指す。通知が郵送される場合は、特段の事情がなければ、その郵便物が到達した日が「知った日」として扱われる。

審査請求が行われると、雇用保険審査官による審理が行われ、その結果に基づいて決定が出される。ここで意識しておきたいのが、行政手続き全般に共通する一般原則として、「審査請求をしても、原処分の効力は当然には止まらない」という点だ。行政処分は、不服申立て中であっても原則としてそのまま効力を持ち続ける(執行不停止の原則)。たとえば基本手当の不支給決定に審査請求をしたとしても、審査請求をしている間に自動的に支給が始まるわけではない。この前提を知らずに「審査請求すれば何とかなる」と考えてしまうと、想定とのズレが生じやすい。

もう一つ重要なのが、「みなし棄却」の仕組みだ。審査請求をした日の翌日から起算して3ヶ月を経過しても決定が出ない場合、請求人は、審査官が審査請求を棄却したものとみなして、決定を待たずに次の手続き(再審査請求)に進むことができる。行政側の処理が長引いても、請求人がいつまでも待たされ続けることのないようにする仕組みだ。

ここまでを整理すると、審査請求の骨格は次のようになる。

項目内容
請求先雇用保険審査官(都道府県労働局)
請求期間処分を知った日の翌日から3ヶ月以内
請求方法文書または口頭
原処分の効力審査請求中も原則継続(執行不停止の一般原則)
みなし棄却請求から3ヶ月経過しても決定がない場合に可能

次の章では、審査官の決定にさらに不服がある場合の「再審査請求」と、その先にある訴訟との関係を見ていく。

第3章:再審査請求・訴訟との関係

審査官の決定にさらに不服がある場合は、労働保険審査会への再審査請求に進む。

再審査請求期間は、審査官の決定書(謄本)が送達された日の翌日から起算して2ヶ月以内だ。審査請求の3ヶ月に対して、再審査請求は2ヶ月という違いがあるので、数字を混同しないよう意識しておきたい。

再審査請求も、審査請求と同じく「みなし」の仕組みが用意されている。審査請求をした日の翌日から起算して3ヶ月を経過しても審査官の決定がない場合、請求人は決定を待たずに再審査請求へ進むことができる(前章で触れた「みなし棄却」の仕組みと同じ考え方だ)。

労働保険審査会は、委員9人で構成される合議体だ。雇用保険審査官・労災保険審査官が「独任制」(1人で判断する)であるのに対し、労働保険審査会は合議体で審理する点も、制度の性格の違いとして覚えておきたい。

取消訴訟との関係(裁決前置主義)

再審査請求の裁決にも納得できない場合、最終的には地方裁判所への取消訴訟に進むことになる。ここで重要なのが、雇用保険法では原則として「裁決前置主義」が採られている点だ。

つまり、原則として、処分の取消しを求める訴えは、再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経た後でなければ提起できない。審査請求・再審査請求という行政内部の手続きを飛び越えて、いきなり裁判に持ち込むことはできない、という建付けになっている。

ただし、この原則には例外がある。

  • 再審査請求をした日の翌日から起算して3ヶ月を経過しても裁決がないとき
  • 裁決を経ることによって生じる著しい損害を避けるための緊急の必要があるとき、その他正当な理由があるとき

このいずれかに該当する場合は、裁決を経ずに取消訴訟を提起することができる。

取消訴訟の出訴期間は、裁決があったことを知った日の翌日から起算して6ヶ月以内だ。

整理すると、雇用保険の不服申立て・訴訟の流れと期間は、次のようになる。

段階請求先・提起先期間
審査請求雇用保険審査官処分を知った日の翌日から3ヶ月以内
再審査請求労働保険審査会決定書送達の翌日から2ヶ月以内
取消訴訟地方裁判所裁決を知った日の翌日から6ヶ月以内(原則裁決前置)

審査請求→再審査請求→取消訴訟という3段階の手続きは、それぞれ請求先・期間が異なる上に、「みなし棄却」「裁決前置主義の例外」といった細かい例外規定も絡んでくる。次の章では、この複雑さを試験対策としてどう整理すればいいか、そして実際の裁判例や利用実態を通じて、この制度がどう機能しているのかを見ていく。

第4章:📝試験対策コラム・判例コラム

試験対策コラム:3つの期間と「前置主義」の関係を一本の線で覚える

この分野で一番つまずきやすいのは、期間の数字がバラバラに出てくることだと思う。自分が勉強していたときも、「審査請求は3ヶ月、再審査請求は2ヶ月、取消訴訟の出訴期間は6ヶ月」という3つの数字を、個別の暗記カードのように覚えようとして混乱した経験がある。

おすすめなのは、「行政手続き内(審査請求・再審査請求)は短め、裁判に行ってからは長め(6ヶ月)」という大きな構造でまず捉えることだ。そのうえで、

  • 審査請求:3ヶ月
  • 再審査請求:2ヶ月
  • 出訴期間:6ヶ月

と、数字だけを3点セットで縦に並べて覚えると定着しやすい。

もう一つの試験的な要注意ポイントは、「裁決前置主義には例外がある」ということだ。「裁決を経なければ訴訟を提起できない」という原則だけを覚えて、「3ヶ月経過しても裁決がないとき」「緊急の必要があるとき」という例外を見落とすと、選択式で足をすくわれやすい。原則と例外をセットで覚えておきたい。

判例コラム:受給資格の判定を争い、裁判所が処分を支持した事例

不服申立て制度は、制度として存在するだけでなく、実際に使われてきた経緯がある。その一例として、昭和61年1月27日に浦和地方裁判所が判決を出した事件(事件番号:昭和60年(行ウ)第12号、裁決取消請求事件)がある。

この事件では、離職前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あった人が、その後再就職して再び被保険者となり、6ヶ月が経過する前に再び離職した場合の扱いが争われた。公共職業安定所長は、後の離職を基本手当の受給資格に係る離職とは認めず、最初の離職日の翌日から1年間を受給期間の満了日とし、それ以降は基本手当を支給しないという処分を行った。これに対して原告は、審査請求・再審査請求を経た上で、裁決の取消しを求めて訴訟を起こしたが、裁判所は職業安定所長の処分を適法と判断した。

この事例から読み取れるのは、「受給期間」と「受給資格」は別の概念であり、被保険者期間が一度リセットされずに残っていても、受給期間の計算は最初の離職日を基準に進んでいく、という雇用保険制度特有の考え方だ。同時に、審査請求・再審査請求という行政手続きを経た上で、なお裁判まで争われたケースが実際に存在することも分かる。不服申立て制度は条文上の知識にとどまらず、実際に運用されてきた制度だという実感を持つきっかけになった。

※判例の内容は裁判所ウェブサイト「裁判例検索」に掲載されている判示事項に基づいて整理したものです。個別の事案への当てはめについては、最新の判例・実務をご確認ください。

実態コラム:審査請求は「訴訟」よりもずっと手前にある制度

審査請求・再審査請求という言葉を聞くと、多くの人は「行政を訴える」「裁判沙汰になる」というような重たいイメージを持つかもしれない。実際、自分も最初にこの制度を勉強したとき、「訴訟の一種」くらいの感覚で捉えていた。

だが実際には、審査請求・再審査請求は裁判所を使う手続きではない。行政の内部に置かれた審査官・審査会に対して行う、もう少し手前の段階の異議申し立て制度だ。

  • 弁護士を立てる必要はなく、文書または口頭で、自分自身がハローワークの判定に対して直接「この判定はおかしいのではないか」と言うことができる
  • 費用は基本的にかからない
  • 裁判所に行く前段階として、行政の中でもう一度判断してもらう機会、と捉えるのが実態に近い

つまり、「行政を相手に訴訟を起こす」というほど大げさな話ではなく、「まず行政の中で、もう一度見てもらう」程度の感覚で使える制度、というのが審査請求の実際の位置づけだ。

それでも、令和6年度に労働保険審査会が出した裁決599件のうち、雇用保険に関するものは1割にも届かない。費用面のハードルが低い割に、実際の利用件数は決して多くない。これは「使いにくいから使われていない」というより、「基本手当の判定一つひとつについて、時間をかけて争うコストに見合わないと判断されることが多い」という実務的な事情のほうが大きいと考えられる。

逆に言えば、「会社都合か自己都合か」のように、その後の給付日数や生活設計に直結するような判定であれば、決して使うべきでない制度ではない。制度の名前の重たさに身構えすぎず、「行政の中で、もう一度見てもらう機会がある」という事実として知っておく価値があると思う。

まとめ

雇用保険の処分に不服がある場合の手続きを整理すると、次のようになる。

  • 雇用保険の不服申立て制度は、被保険者資格の確認・失業等給付・不正受給の返還命令等が対象。雇用保険二事業の給付金等は対象外(行政不服審査法による)
  • 審査請求は雇用保険審査官へ、処分を知った日の翌日から3ヶ月以内
  • 再審査請求は労働保険審査会へ、決定書送達の翌日から2ヶ月以内
  • 取消訴訟は原則「裁決前置主義」。例外として、3ヶ月経過しても裁決がない場合や緊急の必要がある場合は、裁決を経ずに提起可能
  • 出訴期間は、裁決を知った日の翌日から6ヶ月以内
  • 実際に裁判まで争われた事例もあり、制度は条文上だけでなく実務でも機能している
  • 一方で実際の利用件数は少なく、費用の問題よりも「争うコストに見合うか」という判断が利用のハードルになっている

審査請求・再審査請求は、普段の生活では縁遠い手続きに見えるかもしれない。しかし、基本手当の判定一つで生活への影響が大きく変わることを考えると、「納得できないときに争う手段がある」と知っておくことには意味があると思う。

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※本記事は筆者個人の見解をもとに作成しています。法律は改正される場合がありますので、最新情報は厚生労働省または公式サイトでご確認ください。

【一次情報の確認先】

・e-Gov法令検索「雇用保険法」(第69条~第71条)

・e-Gov法令検索「労働保険審査官及び労働保険審査会法」

・厚生労働省「労働保険審査会」

・裁判所「裁判例検索」

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