【雇用保険シリーズ 第4回】
雇用保険の勉強をしていたころ、高年齢雇用継続給付という制度は、正直なところ「いつか自分にも関係してくるかもしれない、遠い話」程度の認識だった。資格を取ったのは33歳の頃で、60歳という年齢にはまだ距離があったからだ。
それから時間が経ち、自分の年齢を重ねるなかで気づいたのは、60歳という節目より先に、親の介護というかたちで雇用継続給付に関わる可能性のほうが、むしろ現実味を帯びてきているということだ。高年齢雇用継続給付はまだ少し先の話だが、介護休業給付は今の自分にとって「いつ必要になってもおかしくない」制度になっている。
この記事では、雇用継続給付という区分に含まれる3つの給付——育児休業給付金・介護休業給付金・高年齢雇用継続給付金——を取り上げる。2025年改正があった育児休業給付・高年齢雇用継続給付は改正の中身まで整理しつつ、介護休業給付については「いつか自分が使うかもしれない制度」という視点も交えて見ていきたい。
第1章:雇用継続給付とは何か
第2回で整理した通り、雇用保険の失業等給付は、求職者給付・就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付の4つに分かれる。このうち雇用継続給付は、「失業していないが、働き続けることが難しくなった場面」を支える給付だ。
| 区分 | 主な給付 | 対象となる場面 |
|---|---|---|
| 求職者給付 | 基本手当など | 失業して仕事を探しているとき |
| 就職促進給付 | 再就職手当など | 早期に再就職できたとき |
| 教育訓練給付 | 教育訓練給付金 | 自ら職業訓練を受けたとき |
| 雇用継続給付 | 育児休業給付金、介護休業給付金、高年齢雇用継続給付金 | 育児・介護・高齢で雇用継続が難しくなったとき |
雇用継続給付という区分は1994年に創設された。求職者給付・就職促進給付が雇用保険法制定当初(1974年)からあったのに対して、比較的新しい区分にあたる。「失業していないのに雇用保険から給付が出る」という発想自体、その時代の社会の変化——女性の就労継続、高齢者雇用の延伸——を反映したものだと考えると理解しやすい。
雇用継続給付に含まれる3つの給付は、対象も場面もまったく異なる。
| 給付名 | 対象となる場面 | 給付率(原則) |
|---|---|---|
| 育児休業給付金 | 育児休業を取得したとき | 67%(180日まで)/50%(以降) |
| 介護休業給付金 | 介護休業を取得したとき | 67% |
| 高年齢雇用継続給付金 | 60歳以降、賃金が大きく下がったとき | 最大10%(2025年4月以降に60歳に達する人) |
この章では位置づけだけ押さえて、次章から個別の給付を見ていく。
第2章:育児休業給付金——2025年4月、給付率が実質80%になった
育児休業給付金は、1歳(一定の場合は2歳)未満の子を育てるために育児休業を取得した被保険者に支給される給付だ。
基本の給付率
育児休業給付金の給付率は、休業開始から180日までは休業開始前賃金の67%、180日経過後は50%だ。67%という数字は、社会保険料の免除効果もあわせると、実質的に手取りの8割程度に相当するとされている。
支給を受けるための要件
主な要件は次の2つだ。
- 育児休業開始前2年間に、被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること(基本手当の要件と似た考え方)
- 原則として子が1歳に達する日より前の期間に、育児休業を取得していること(一定の場合は1歳6ヶ月、2歳まで延長可)
📝 試験対策コラム:「産後休業」と「育児休業」は別物
出産した女性には、出産日の翌日から8週間の「産後休業」がある。これは労働基準法上の休業であり、雇用保険の育児休業給付の対象にはならない(健康保険の出産手当金の対象)。育児休業給付金の対象になるのは、産後休業が終わったあとの育児休業の期間だ。男性には産後休業がないため、出生直後から育児休業(後述する出生時育児休業を含む)の対象になる。この「産後休業がある・ない」という男女の違いは、次に説明する2025年改正の要件にも関わってくる。
2025年4月の改正:出生後休業支援給付金の創設
2025年4月、育児休業給付に大きな改正があった。新たに「出生後休業支援給付金」が創設され、一定の要件を満たすと、育児休業給付金に13%が上乗せされる。
要件は次の2つを両方満たすことだ。
- 子の出生後8週間以内(女性は産後休業後8週間以内)に、本人が通算14日以上の育児休業を取得すること
- 配偶者も通算14日以上の育児休業を取得すること(つまり、夫婦双方が一定期間育休を取ることが条件)
上乗せされる期間は最大28日間で、67%+13%=給付率80%になる。社会保険料の免除効果もあわせると、休業中の収入が休業前とほぼ変わらない「手取り10割相当」になるよう設計されている。
「共働き・共育て」を後押しする狙いの改正で、片方だけが育休を取っても上乗せの対象にはならない点が試験的にも実務的にもポイントになる。
📝 試験対策コラム:出生時育児休業給付金との関係
男性が子の出生後8週間以内に取得する「産後パパ育休」(出生時育児休業)にも、同じく67%の給付率で「出生時育児休業給付金」が支給される。出生後休業支援給付金は、この出生時育児休業給付金にも、通常の育児休業給付金にも、要件を満たせば上乗せされる仕組みだ。名称が似た給付が並ぶので、「出生時育児休業給付金」(休業そのものへの給付)と「出生後休業支援給付金」(要件を満たした場合の上乗せ)を区別して覚えておきたい。
第3章:介護休業給付金——「いつか自分も」が近づいてきた制度
介護休業給付金は、家族の介護のために介護休業を取得した被保険者に支給される給付だ。
制度の仕組み
- 対象となる家族1人につき、通算93日まで取得できる
- 93日を3回まで分割して取得できる(一度に使い切る必要はない)
- 給付率は休業開始前賃金の67%
📝 試験対策コラム:93日の数え方と対象家族
93日はカレンダー上の日数で数える。土日祝日も含めて数えるため、平日だけを介護休業として申請しても、カレンダー上の経過日数として消費されていく。対象家族は配偶者(事実婚を含む)・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫と幅広い。「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」が要件になっており、入院や手術のような短期間の付き添いだけでは対象にならない点も押さえておきたい。
支給を受けるための要件
主な要件は、介護休業開始前2年間に、被保険者期間が通算して12ヶ月以上あることだ。育児休業給付金と同じく、基本手当の被保険者期間の考え方がベースになっている。
📝 体験コラム:親の様子を見ていて、制度が他人事ではなくなった
両親は今のところ大きな病気もなく、元気と言っていい状態だ。それでも80歳を超えてくると、目が悪くなってきたり、ちょっとした動作に時間がかかるようになったり、日常生活が以前より大変そうに見える場面が増えてきた。
社労士の勉強をしていたころは、介護休業給付金は条文として知っているだけの制度だった。それが今は、「いつ自分が申請する側になるかわからない」制度として、ようやく実感を伴って見えてきている。
幸い、今は買い物に行くのが大変でもネットショップで日用品や食品を届けてもらえる時代になった。高齢になっても自宅で暮らし続けるハードルは、一昔前より確実に下がっていると感じる。それでも、入院や急な体調変化のタイミングでは、介護休業のような「仕事を一定期間休める制度」と、それを支える給付があることの意味は大きい。
知識として知っているだけでは何も変わらない。実際に自分や家族が当事者になったとき、93日という日数、3回まで分割できるという仕組み、67%という給付率——これらを覚えていたかどうかで、行動の選択肢が変わってくる。今回改めて整理したのは、自分自身のための再確認でもあった。
第4章:高年齢雇用継続給付金——2025年4月、給付率15%から10%へ
高年齢雇用継続給付金は、60歳以降に賃金が大きく下がった労働者を支援する給付だ。雇用継続給付の中でも、社労士試験では出題頻度が高い分野になる。
2つの種類
高年齢雇用継続給付は、状況によって2種類に分かれる。
| 種類 | 対象となる場面 |
|---|---|
| 高年齢雇用継続基本給付金 | 失業給付を受けずに、60歳以降も継続して雇用される場合 |
| 高年齢再就職給付金 | 基本手当を受給したあと、再就職した場合 |
利用者が多いのは基本給付金のほうなので、この記事では基本給付金を中心に説明する。
支給を受けるための要件
- 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
- 雇用保険の被保険者期間が通算5年以上あること
- 60歳到達時点の賃金に比べて、現在の賃金が75%未満に低下していること
2025年4月の改正:給付率15%→10%へ
これまで、高年齢雇用継続給付金の給付率は最大15%だった。たとえば60歳到達時点の賃金が30万円、現在の賃金が18万円(低下率60%)であれば、給付率15%が適用され、月額27,000円が支給される、という仕組みだ。
2025年4月の改正で、この最大支給率が10%に引き下げられた。同じ条件(賃金低下率60%)であれば、給付率10%が適用され、月額18,000円となる。1ヶ月あたり9,000円、年間で見ると10万円以上の差が出る計算だ。
📝 試験対策コラム:誰が新しい支給率の対象になるか
ここが少し複雑で、試験的にも実務的にも注意が必要な点だ。新しい支給率(10%)が適用されるのは、2025年4月1日以降に60歳に達した人が対象になる。2025年3月31日以前に60歳に達した人は、その後も従来の最大15%が継続して適用される。
また、60歳に達した時点で被保険者期間が5年に達していない場合は、その5年を満たした日が2025年4月1日以降かどうかで判定される。「60歳になった日」だけでなく「被保険者期間5年を満たした日」も基準になりうる点は、選択式で問われやすいポイントだ。
改正の背景には、高年齢者雇用安定法による65歳までの雇用確保措置の義務化が進み、企業側の対応も同一労働同一賃金の浸透などで変わってきたことがある。「60歳以降の賃金低下を雇用保険が補う」という制度の必要性そのものが、社会の変化とともに見直されている段階にあるとも言える。
📝 体験コラム:60歳より先に来そうな現実
正直なところ、自分はまだ高年齢雇用継続給付の対象になる年齢には届いていない。資格を取ったのは33歳の頃で、当時は60歳という年齢がまだ実感のないものだった。
ただ今回改めて制度を整理してみて感じたのは、自分にとっては高年齢雇用継続給付より先に、前章で触れた介護休業給付のほうが現実味を帯びてきているということだ。60歳という節目は誰にとっても平等に近づいてくるが、家族の介護というかたちで雇用継続給付に関わる可能性は、年齢にかかわらずもっと早く訪れることがある。
雇用継続給付という1つの区分の中に、こうして「自分にとっての近さ」が違う制度が並んでいる。試験対策としては3つとも同じ重みで覚える必要があるが、実生活では人によって近さが違う、ということも書いておきたかった。
まとめ
雇用継続給付に含まれる3つの給付を整理すると、次のようになる。
- 雇用継続給付は1994年創設の比較的新しい区分。育児休業給付金・介護休業給付金・高年齢雇用継続給付金の3つを含む
- 育児休業給付金は給付率67%(180日まで)/50%(以降)。2025年4月から「出生後休業支援給付金」が創設され、夫婦双方が一定期間育休を取得すると13%上乗せされ、給付率は実質80%(手取り10割相当)になる
- 介護休業給付金は対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割取得が可能。給付率は67%
- 高年齢雇用継続給付金は60歳以上65歳未満の一般被保険者が対象。2025年4月以降に60歳に達する人は、最大支給率が15%から10%に引き下げられた
- 3つとも「失業していないのに雇用保険から給付が出る」という点が共通しているが、対象になる場面・タイミングは人によって近さが違う
試験対策としては3つとも同じ重みで覚える必要があるが、自分の場合は高年齢雇用継続給付より先に、親の介護というかたちで雇用継続給付に関わる可能性のほうが近いと感じている。制度は知っていても、自分にとっての「近さ」を意識して整理しておくと、いざというときに動きやすくなるはずだ。
雇用保険シリーズでは、ここまで被保険者の種類・基本手当・就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付と、主要な給付を一通り取り上げた。次回以降は、検索ニーズや法改正の動向を見ながら、テーマを絞って続けていく予定だ。
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※本記事は筆者個人の体験・見解をもとに作成しています。法律は改正される場合がありますので、最新情報は厚生労働省または公式サイトでご確認ください。
【一次情報の確認先】
・e-Gov法令検索「雇用保険法」
・厚生労働省「雇用保険制度」「育児休業給付」「高年齢雇用継続給付」
・ハローワークインターネットサービス「雇用継続給付」


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